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香りに慣れる「嗅覚順応」の仕組みと対策

アロマ・精油
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薬剤師になって数年目、医師の訪問診療に同行する仕事をしていた時期があります。ある患者さんのお宅にうかがったとき、正直に言うと排泄物のにおいが充満していて、最初の数分はかなり辛く感じました。ところが、深呼吸を何度か繰り返しているうちに、いつの間にか気にならなくなっていたんです。当時の私は「これは嫌なにおいだから、身を守るために鼻が慣れてくれるんだろう」と勝手に解釈していました。

ところが、香りとくらしラボの仕事を始めてから調べていくと、この「鼻が慣れる」という現象は、嫌なにおいに限った話ではなく、お気に入りのアロマやフレグランスのような良い香りでもまったく同じ仕組みで起きることが分かってきました。風鈴×アロマで整える、眠れない夜の習慣という記事でも、「香りのケアがだんだん効きにくく感じる理由」のひとつとして少し触れましたが、今回はこの「嗅覚順応」という現象そのものを、仕組みから対策まで詳しく掘り下げていきます。

嗅覚順応とは?仕組みを薬剤師が解説

嗅覚順応とは、同じにおいを嗅ぎ続けていると、そのにおいに対する感度がだんだん下がっていく現象のことです。鼻の奥にある嗅細胞は、におい分子をキャッチして脳に信号を送る役割を持っていますが、同じ分子による刺激が続くと、脳が「これはもう注意しなくていい情報」と判断し、信号の感度を意図的に下げていくと考えられています。数分から十数分ほどで感じ方が鈍くなり始める方が多く、これは香水や柔軟剤のような良い香りにも、生ゴミや汗のにおいのような不快なにおいにも、区別なく起こる体の自然な反応です。

嗅覚順応のメリット、実は体を守る合理的な反応

嗅覚順応は、決して体の不調や異常ではありません。むしろ、限られた脳のリソースを「新しい変化」に集中させるための、合理的なしくみだと考えられています。もしこの機能がなければ、私たちは常に自分の香水や部屋のにおいに気を取られ続け、新しく発生した危険なにおい(焦げ臭さやガス臭など)への反応が遅れてしまうかもしれません。不快な環境の中でも徐々に順応できることで、日常生活を送りやすくなっているという側面もあります。

セージ
セージ
訪問診療の同行を始めたばかりの頃、看護師さんが涼しい顔でお宅に入っていくのを見て「すごいな」と思っていたのですが、今思えばあの方も同じように嗅覚順応で楽になっていた部分があったのかもしれません。慣れって、悪いことばかりじゃないんですよね。

嗅覚順応のデメリット・注意したい点

一方で、嗅覚順応には日常生活で困る場面もあります。代表的なのが、香水やアロマの「つけすぎ・焚きすぎ」です。自分では香りが弱く感じられて追加してしまいますが、周囲の人には最初から十分すぎるほど香っている、ということが起こりやすくなります。これは、いわゆる香害の一因としても指摘されている点です。また、自分の体臭や自宅のにおいにも同じことが起こるため、家族や来客から指摘されて初めて気づく、というケースも珍しくありません。

アロマディフューザーやお香を使っている方の場合、「今日は香りが弱い気がする」と感じて精油の量を増やしたり、何本も焚き足したりしてしまうことがありますが、これは香りそのものが弱くなったのではなく、自分の鼻が慣れているだけというケースも多くあります。精油の使いすぎは、肌への刺激やコストの面でももったいないので、注意しておきたいポイントです。さらに見逃せないのが安全面で、ガス漏れや焦げ臭さなど、本来は危険を知らせてくれるはずのにおいにも順応してしまうことがあるため、「最近においを感じにくいな」と思ったときほど、視覚や他の手段でも安全確認をする意識を持っておくと安心です。

セージ
セージ
自分の家のにおいって、住んでいる本人が一番気づきにくいと言われています。来客前にちょっと不安になったら、一度外の空気を吸って鼻をリセットしてから帰ってくると、意外と客観的に確認できますよ。

鼻をリセットする具体的な対策

  • 15〜30分ほどその場を離れて、別のにおいのない環境で鼻を休ませる
  • 香水売り場でも使われる方法として、コーヒー豆の香りを嗅いで一度感覚をリセットする
  • 同じ精油や香水を毎日使い続けるのではなく、2〜3種類をローテーションして使う
  • こまめに換気をして、部屋にこもったにおいをリセットする習慣をつける
セージ
セージ
正直なところ、香りのローテーションを几帳面にスケジュール管理するのは私にはしんどくて続きませんでした。「今日はなんとなくこっちの気分」くらいのゆるさで2〜3種類を気分で入れ替えるくらいがちょうどよく、完璧を目指さなくて大丈夫だと思っています。

なお、嗅覚順応はあくまで一時的で自然な反応ですが、風邪や花粉症でもないのに長期間においそのものをまったく感じない、急ににおいが分からなくなった、といった場合は、嗅覚順応とは別の嗅覚障害が隠れている可能性もあります。セルフケアだけで様子を見ず、耳鼻咽喉科などの医療機関に相談することをおすすめします。

対策が特に役立つ人・そこまで気にしなくていい人

ここまでの内容を踏まえると、香りのローテーションや鼻のリセットを意識的に取り入れたほうがよいのは、以下のような方です。

  • 毎日同じ香水やアロマを使っていて、最近香りが弱く感じる人
  • 「つけすぎ」「焚きすぎ」を周囲から指摘されたことがある人
  • 自宅や自分のにおいが気になるけれど、自分では判断しづらい人

一方で、香りを毎日同じもので楽しむこと自体は悪いことではなく、「安心できるルーティン」として続けている方が無理にローテーションを増やす必要はありません。嗅覚順応は誰にでも起こる自然な反応なので、神経質になりすぎず、気になったときだけ対策を取り入れるくらいの付き合い方で十分です。

香りをローテーションするなら、精油セットが便利

嗅覚順応の対策として一番手軽なのは、香りのローテーションです。とはいえ、精油を1本ずつ買い足していくと、香りの系統が偏ってしまったり、使いきれずに余らせてしまったりすることもあります。そんなときは、最初から複数の香りがセットになった商品を選ぶと、香りの引き出しを一気に増やせて便利です。ここでは、価格帯やブランドの異なる2つのセットを取り上げ、それぞれの特徴を比較しながらご紹介します。

「香りは好きなものを一つ決めて、ずっとそれを使い続けたい」という方も多いと思いますが、嗅覚順応という仕組みを知ってしまうと、実は同じ香りだけを使い続けるより、いくつかの香りを気分で切り替えたほうが、毎回「香っている」という満足感を得やすいとも言えます。特にディフューザーやお香で香りを楽しんでいる方は、精油を切らしたタイミングで新しい系統に挑戦してみるだけでも、鼻がリフレッシュされて新鮮に感じやすくなります。せっかくローテーションを取り入れるなら、普段あまり選ばない系統の香りも1本混ぜておくと、選択肢の幅が広がって長く楽しめるようになります。

セットを選ぶときに意識したいのは、「香りの系統がなるべく分散しているか」という点です。柑橘系ばかり、フローラル系ばかりが揃っていると、結局似たような香りに順応しやすくなってしまい、ローテーションの効果が薄れてしまいます。ラベンダーのような和らぐ系統、オレンジやグレープフルーツのようなすっきりした柑橘系、ユーカリやティートゥリーのようなクリアな系統など、性質の異なる香りが混ざっているセットを選ぶと、気分や場面に応じて使い分けやすくなり、結果的に一つの香りに頼りすぎることも防ぎやすくなります。

また、精油の容量にも注目しておくと失敗が減ります。1本あたりの容量が多すぎると、香りに飽きたり順応したりした頃にはまだ半分以上残っている、ということになりがちです。ローテーション目的であれば、1本5ml前後の小容量が複数本セットになっているタイプのほうが、香りを使い切るサイクルと順応のサイクルが噛み合いやすく、結果的に無駄になりにくい傾向があります。使うシーンによって、寝室用・仕事部屋用・玄関用のように置き場所ごとに香りを固定してしまうのも、意図せず同じ香りを長時間嗅ぎ続けてしまう状態を防ぐ工夫のひとつです。

アロマ エッセンシャルオイル 選べる精油5ml×6本セット(なごみ)
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アロマ エッセンシャルオイル 選べる精油 5ml×6本セット(なごみ)

ラベンダー・オレンジ・ユーカリ・グレープフルーツ・ハッカなど好きな香りを選べる、AEAJ認定の100%天然精油セット。まずは手頃な価格でローテーション用の香りを揃えたい方の入り口として選びやすいラインナップです。

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なごみのセットは、6種類の中から好きな香りを自分で選べるのが特徴です。まずは系統の違う香りを何種類か試してみて、自分がどの系統に順応しやすいか(=飽きやすいか)を確かめてみるのにもちょうどいいボリュームといえます。もう少し種類を増やして、季節や気分によって幅広く使い分けたいという方には、次のような専門ブランドのセットも選択肢に入ってきます。

生活の木 エッセンシャルオイル12本セット
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生活の木 エッセンシャルオイル12本セット(5ml×12種類/公式)

アロマ専門ブランド・生活の木が手がける、12種類の天然精油がまとめて揃うセット。系統の異なる香りが一度に手に入るので、その日の気分や部屋によって使い分けたい方、本格的にローテーションを楽しみたい方に向いています。

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セージ
セージ
最初から12種類は多く感じるかもしれませんが、系統ごとに2〜3本ずつ揃っているセットなら、平日は集中したい日にユーカリ系、休日はゆったりしたい日にラベンダー系、というように使い分けがしやすくなります。まずは6本セットで試して、香りの好みが掴めてきたら本数の多いセットにステップアップするのがおすすめです。

2つのセットを比べると、本数が少ないほうは価格を抑えて気軽に試せる一方、系統の幅はやや限られます。本数が多いほうは、その分だけ香りの引き出しが増えて長く使い分けを楽しめますが、使いきるまでに時間がかかる場合もあります。どちらが正解というわけではなく、「まず試してみたい」のか「最初からしっかり揃えたい」のか、自分の使い方をイメージしてから選ぶと失敗しにくくなります。迷ったときは、まず少なめの本数で「自分がどのくらいの期間で一つの香りに飽きるのか」というペースを掴んでから、本数の多いセットに移行する順番がもっとも失敗しにくい選び方です。香りのローテーションは、一度仕組みを作ってしまえば習慣として続けやすくなるので、最初の1セットは気負わずに選んでみてください。

まとめ

嗅覚順応は、良い香りにも嫌なにおいにも等しく起こる、体にとってごく自然な反応です。香水やアロマの「つけすぎ・焚きすぎ」につながったり、自分や自宅のにおいに気づきにくくなったりする一方で、無理に完璧を目指す必要はありません。香りを2〜3種類ローテーションする、こまめに換気する、気になったら一度鼻を休ませるといった小さな工夫を、思い出したときに取り入れてみてください。においを長期間まったく感じないなど気になる症状が続く場合は、無理をせず医療機関にも相談してくださいね。

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