以前、精油(アロマオイル)の選び方|香りの系統・効能で選ぶコツという記事で、代表的な精油を15種類ほど紹介しました。その中でも「まずはこれから」の定番格として挙げたのがラベンダーです。フローラル系の中でもクセが少なく、安眠・リラックス用途の代表選手として名前を出しましたが、実はひと言で「ラベンダー」といっても、精油の世界では中身が一種類ではありません。
ラベルに「ラベンダー」とだけ書かれた商品を手に取っても、実は品種によって香りの印象も、期待できる作用も、向いている使い方もかなり違います。この記事では、精油売り場でよく見かける「ラベンダー」の中身を掘り下げて、後悔しない選び方を薬剤師の視点から整理していきます。
この記事でわかること
- 「ラベンダー」精油に真正・スパイク・ラバンジンの3種類がある理由
- 3種類の香り・成分・用途の違いを比較表で整理
- 真正ラベンダーのメリットと、見落としがちなデメリット・注意点
- 向いている人・向いていない人と、価格帯別の選び方
「ラベンダー」精油に3つの種類がある理由
植物としてのラベンダー(Lavandula属)にはいくつもの品種がありますが、精油として流通しているものは大きく3つに分けられます。標高の高い場所で育つ「真正ラベンダー(Lavandula angustifolia)」、標高の低い場所で育ち樟脳(カンファー)のようなシャープな香りを持つ「スパイクラベンダー(Lavandula latifolia)」、そしてこの2つを交配させてできた「ラバンジン(Lavandula×intermedia)」です。
真正ラベンダーは香りが穏やかで鎮静作用に優れる一方、栽培に向いた高地が限られるため収穫量が多くありません。対してラバンジンは真正ラベンダーとスパイクラベンダーのいいとこ取りをねらって作られた交配種で、平地でも大量に栽培できるうえに香りも比較的しっかりしています。結果として、現在市場に出回っている「ラベンダー精油」の99%以上がこのラバンジンだと言われています。


真正・スパイク・ラバンジンを比較
3つの品種の違いを、香りの特徴や主な使い方を中心に一覧にしました。パッケージに品種名の記載がない場合、産地や価格帯からある程度見当をつけることもできます。
| 真正ラベンダー | スパイクラベンダー | ラバンジン | |
| 学名 | Lavandula angustifolia | Lavandula latifolia | Lavandula×intermedia |
| 主な産地 | フランス山岳地帯など標高の高い産地 | 地中海沿岸の低地 | フランスの平地で大規模栽培 |
| カンファー含有量 | ほとんど含まない | 多い(刺激的な樟脳臭) | 数〜15%程度含む |
| 香りの印象 | 甘く穏やかなフローラル | ハーブ調でシャープ・清涼感がある | 真正よりさっぱり・香りはしっかり |
| 主な使い方 | 安眠・リラックス・肌ケア | 抗菌・虫除け・日焼けや傷あとのケア | 芳香・ルームフレグランス・掃除用品 |
| 流通量・価格帯 | 少なめ・やや高価 | 専門店中心・中価格帯 | 非常に多い・手頃な価格 |
3つの中でも、スパイクラベンダーは店頭やネット通販であまり見かけない品種です。真正ラベンダーの主成分である酢酸リナリルをほとんど含まず、代わりにシネオールやカンファーが主体のすっきりした香り立ちのため、「安眠用」というより殺菌・虫除け・日焼けや傷あとのケアといった実用目的で使われることが多く、リラックス系のアロマテラピーとしてはあまり流通していません。原産地のスペインでは古くから虫刺されや火傷のケアに使われてきた歴史があり、そのくっきりした香りから「男のラベンダー」と呼ばれることもあります。専門店で扱われてはいますが、量販されている「ラベンダー精油」の中に紛れていることはほぼないので、見かけたらむしろ狙って選ぶ側の精油です。

真正ラベンダーのメリット
真正ラベンダーの最大の特徴は、酢酸リナリルとリナロールという2つの成分をバランスよく含んでいる点です。この組み合わせが、香りだけでなく気持ちを落ち着けたいときに選ばれやすい理由になっています。カンファーをほとんど含まないため香りの刺激が少なく、精油の中でも比較的扱いやすい部類に入ります。
安全性データの蓄積が長いことも安心材料のひとつです。芳香浴はもちろん、薄めてマッサージオイルとして使ったり、洗濯や掃除に取り入れたりと使い道が幅広く、精油を初めて選ぶ人にも扱いやすい存在です。単体で使っても様になりますし、柑橘系やハーブ系ともブレンドしやすく、香りの調整役としても優秀です。
見落としがちなデメリット・注意点
良い面ばかりではありません。選ぶ前に知っておきたい注意点もいくつかあります。
- 「ラベンダー」表記だけでは真正・スパイク・ラバンジンの区別がつかない商品も多く、狙った作用が得られないことがある
- 真正ラベンダーは収穫量が限られるため、産地やブランドによって価格差が大きい
- フローラル系の甘い香りが苦手な人にとっては、万人受けする香りではない
- 妊娠初期や持病がある方、乳幼児が身近にいる場合は、使用前に医師や専門家に相談したほうがよい品種もある
- 同じ真正ラベンダーでも、産地や収穫年によってリナロール比率にばらつきがあり、香りの強さが変わることがある

向いている人・向いていない人
真正ラベンダーが向いているのは、就寝前の芳香浴で気持ちを落ち着けたい人、香りの刺激が少ないものを選びたい人、精油を薄めて肌のセルフケアに使ってみたい人です。逆に、香りの強さやコストパフォーマンスを優先したい人、掃除やルームフレグランスとして手軽に使いたい人には、ラバンジンのほうが向いています。目的がはっきりしていれば、どちらが「正解」ということもありません。
なお、真正ラベンダーの鎮静作用はあくまで「香りによる気分の変化」の範囲にとどまり、不眠や自律神経の不調そのものを治療するものではありません。眠れない状態やイライラが何週間も続くようなら、香りに頼るだけでなく一度クリニックで相談してみてください。
価格帯で選ぶ、真正ラベンダー精油3選
真正・スパイク・ラバンジンの違いがわかると、次に迷うのは「では実際にどれを選べばいいのか」という点だと思います。ここからは、同じ真正ラベンダーの中から、容量やグレードの異なる3本を選んでご紹介します。いずれもラバンジンではなく真正ラベンダー(Lavandula angustifolia)を使用しているものを選んでいるので、「表記だけでは見分けがつかない」という先ほどの注意点はクリアした状態からのご案内です。
選び方の軸はシンプルで、初めて真正ラベンダーの香りを確かめてみたいだけなら小容量でコストを抑えられるものから、日常的にディフューザーで使うなら定番ブランドの中容量から、香りの奥行きや品質そのものにこだわりたいなら産地や認証にこだわったプレミアムなものから、という順番で考えると選びやすくなります。精油は開封後、酸化によって香りや成分が少しずつ変化していくため、いきなり大容量を買うよりも、自分の使用ペースに合った容量を選ぶことも失敗しないポイントのひとつです。
価格帯だけを見ると「高いものほど良い」と思われがちですが、実際には産地の標高や栽培方法、抽出時期による香りの個性の違いが価格に反映されていることがほとんどです。安価なものが品質的に劣るというより、香りの繊細さや希少性のグレードが違う、というイメージを持っておくと選びやすくなります。
AEAJ表示基準に適合した真正ラベンダー(Lavandula angustifolia)精油です。小容量なので、「まずは真正ラベンダーの香りを確かめてみたい」という方が手を出しやすい価格帯にまとまっています。就寝前のディフューザーやアロマバスなど、日々のリラックス用途に向いています。
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フランス産の真正ラベンダーを使用した、AEAJ表示基準適合認定精油です。老舗ブランドならではの品質の安定感があり、精油を初めて選ぶ方の「まず1本目」としても定番の存在です。10mlとやや大きめの容量なので、ディフューザーで日常的に使いたい方に向いています。
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フランス・プロヴァンス地方の統制原産地呼称(AOP)を取得した、標高の高い産地で育った真正ラベンダーの精油です。残留農薬検査など品質管理の基準が高く、香りの奥行きや品質そのものにこだわりたい方向けのグレードです。
詳しく見るなお、精油は未開封であれば製造後およそ5年、開封後は1年程度を使用の目安とされています。せっかく真正ラベンダーを選んでも、使い切れずに香りが劣化してしまってはもったいないので、自分が半年〜1年で使い切れそうな容量から選ぶのが結果的にコストパフォーマンスの良い選び方になります。
まとめ
「ラベンダー」とひとくくりに呼ばれる精油にも、真正ラベンダー・スパイクラベンダー・ラバンジンという3つの顔があります。市販品の多くはラバンジンで、それ自体が悪いわけではありませんが、「香りで気持ちを落ち着けたい」という目的があるなら、真正ラベンダーを選んだほうが期待に近い体験ができるはずです。ラベルの品種名や学名を一度チェックする習慣をつけるだけで、精油選びの失敗はぐっと減らせます。
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